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「詩のお部屋」

はうえる氏が綴る「詩のお部屋」です。
ちょっと心を和ませて下さい。

著作権法に基づき、個人的に使用する目的以外は無断転記・複写・複製を禁じます。


  深夜の音
Date: 2005-09-14 (Wed)
 夜が来ても 人は眠らなくなった
 夜が来ても 眠れない人がふえた

  今夜は風が吹き抜ける
  窓の下で鳴く虫がいる

       空き缶がひとつけたたましい音
       ぎょっとして一瞬虫が鳴き止む

    時計の秒針 絶え間なく動く
    風もガラス窓をゆらして動く

          郷里の母はもう眠ったろう
          寝息が聞こえて来るようだ

      母も見るだろうか 中秋の満月
      今度の日曜日 一緒に眺めたい

  クロッカスの花
Date: 2005-04-15 (Fri)
昔 だれか歌ってたね
花は遅かったって
あの花は 
     クロッカスだった気がする
     綺麗な花だね 
     綺麗なブルーだね
  もらうはずの人は
           死んじゃったのかな
        歌の世界なんてどうでもいいのに
            気になった
    本当にあり得る話だろうなって

      美しい花をあげて
         人を喜ばせたい
      棺の中に入れて飾っても
      本人は見えないからね
生きてるうちに渡すべきだよね
愛している人には 特にね・・・

  終わりと始まり
Date: 2005-03-31 (Thu)
 ドナウ川のさざ波を聴いた
   小学校の校庭に傘の花が咲く
      マイクをもって少年は言う
        早くお家に帰りましょう
      放送室を後にして校門へ向かう
    水たまりを避けながら歩く
      大きな楠の木の陰に
        くるくる回る黄色の傘が一つ
          少女は黙って手紙をさし出す
        「明日、私 転校するの・・・」
       二人がさようならを言おうとした
         その時 突然稲妻が走った
           怖くないよ、少年は強がりを言った
             怖いよー、少女は素直に泣いた
           泣きながら少女は遠く去って行った
         それが初恋の終わりと始まりだった

    ・・・・・・十年の時が流れた・・・・・・
 
       電車を降りると激しい雨だった
     街角のタバコ屋の前で雨宿り
   隣りに立っている女性と眼が合った
  ドキンと胸が高鳴った
     こかで会ったことがある
       二人は心の中でそう確信する
         ふとまた同時に見詰め合ってしまう
       顔は紅潮し 全身がこわばる
     慌てて正面を向き直し呼吸を探す二人
       女性は息苦しくなってきた
         青年は居たたまれなくなってきた
           いつもの自分がいない不思議な気持ち
         突然、女性はぎこちなく口を開いた
       これ・・良かったらお使いください
     言い終わらないうちに雨の中飛び出した
       足元に黄色い傘があった
 
       青年は何が起こったか分からない
         追いかけようと思うのに
        足が地面から持ち上がらない      
    これが  二度目の恋の終わりと
           初まりだった 

  幻のささやき
Date: 2005-03-16 (Wed)
 私を一人にしないでね
 初めてのキスのとき
 そう言って涙ぐんだ君
   去っていく予感に
   肩を震わせる姿を
   あれほど愛しく思い
      さらに激しく口づけと
      抱擁を交わした青春の日々
      君の悲しみがぼくを支配する

 私を一人にしないでね
 そう言った君を置いて
 ぼくは去ってしまった
   二度目のラブレター書く
   資格なんてないけれど
   君の夢を昨日みました
      薄い水玉模様のワンピース
      そして広い縁の白い帽子
      君の横にはぼうやがいたよ
 
 「パパをずっと待ってたよ」
 ぼうやは走って抱きついた
 小さな腕が首にしがみつく
   駅のホームはがらんとしていた
   微笑みながら君は涙を溜めて
   「お帰りなさい」と一言
      息もできないほどに
      二人を抱きしめた時
      自分の涙で目を覚ます

 私を一人にしないでね
 再び君の声が遠くから
 あれは天を駆ける風の音
   ラブレターはもう書けない
   あなたにメールは届かない
   目覚めてなお君はまぼろし
      魂だけになっても
      君がささやきを
      私は聞いていよう・・・

  狂う
Date: 2005-03-06 (Sun)
友よ 狂ひし友よ
  硬く閉ざされた窓より
  我が名を呼び続ける友よ

 凛々しき少年の面影も
  たくましき青年の肌も
   時の彼方に消ひ 
    老い 早くも君を捕らえ
       君が青春は露と消ゆ

  なぜ かくも君は
   狂いたまひしや・・・
    なぜ かくも我を
    待ちたまひしや・・・

    会うたびに 我を求め
    会うほどに 寂しさを増し
    会っても会っても会い足りぬとは・・・
 
    屋上にて我を見送る君の姿
    虚空を仰ぎみる君の眼差し 
    君 風の声にまぼろしの囁きを聴くや
      
     その冷たき手を握り
       細き指をさすれば       
     忽ちにして 
   両眼より落つる涙あり・・・

   束の間の正気に
   そのあわれ いよいよ迫り
   我 君を直視するをえず・・・

   狂いし友よ
     汝が愛しき女人
        今何処にてあらん・・・

  マスカラ
Date: 2005-03-01 (Tue)
  今日こそは泣かないように
   マスカラをつけた
     だから・・
  いっぱいキスしてほしい
  いっぱい抱きしめてほしい
     だって
  私はわがままいったことない
  いつだって我慢してきたんだから
 
   あなたには愛がないけど
    でも 嬉しいわ 
     愛がないから
       楽しいわ
   もう慣れたのね・・・私たち

    なんて・・・うそ
    本当は・・・うそ
   会っている時だけの温もりなんて
   やはり 虚しいわ さびしいわ・・・
   会っている時だけの安らぎは
   やはり 哀しいわ さびしいわ・・・
    
      私はやはり
      いつでも
     あなたと一緒に
       いたい

  白梅
Date: 2005-03-01 (Tue)
天を崇める節くれだった細い枝
人生の哀歓を知っているお爺さんの
手足のようだ

 外気の寒さに 一瞬ためらう小さな花
 人生の始まりに立つ 幼い孫娘の
 笑顔のようだ

  お爺さんはその子を「梅子」と名づけた
  お爺さんがあれほど可愛がったのに
  梅子は大人になれずに
  この世を去った

 嘆き悲しむ死の床で
 お爺さんは神さまに言った
  「あなたは、どうして私から孫娘を
   引き離したのでしょうか?」

 神さまは応えた。
  
  「おまえの悲しみはよく分かった。
   花には枝が必要だ。地上のある限り、
   お前に毎年、梅子をその腕に抱かせよう。
   梅子は毎年、花となって甦るだろう

   その姿に、多くの人が励まされ
   見つめる者の心は洗われるだろう・・・」

     お爺さんが、安心して
     永い眠りについたのは
     言うまでもありません

  雪降る夜
Date: 2005-02-28 (Mon)
  あなたは 憶えているだろうか
  雪降る夕暮れ時の
   あの さよならを

    あなたは 憶えているだろうか
     しゃれた私の最後の
      あの ことばを

       さあ もう行くがいい 
       お前の肩を抱いて 引きとめはしない
       俺はお前を一人にさせた薄情者だ
 
       さあ もう行くがいい 
       ちらつく雪が お前を凍えさせる前に
       俺は この雪道を上って行く
       大丈夫・・心配ないよ・・・
       そんな目で見つめるとオコルぞ・・ 
       だから
       もう早く行ってくれ
       そして やつによろしくな
       この雪が止んだころには
       俺も新しい恋を
       きっと  見つけるさ・・・

      しかし・・・馬鹿な私は
     映画のようにはいかない
   20秒も歩かないうちに
    振り返ってしまった
  もし 
    そこに あなたの佇んでいる姿があったら
    千年先までもお前を放すまいと
    世界を敵にまわしてでもと・・・
  だが
    あなたは すでにそこにはいなかった
    足跡だけがみえた・・・
 
       その足跡の上に
      つぎつぎと新しい雪がふり積もり
     消えていくのを眺めた
        いたずらに時が過ぎ
          むやみに涙が頬を伝い
         時間がどこかに消えたような
       静かな雪の夜
          
  美しすぎて 
     哀しい夜の底
          不思議な  
            「安住」の世界だった

  願わくば
Date: 2005-02-26 (Sat)

 幽かにまたたく夜空の星を

  一体 だれが美しいと言うのだろう・・・

    ほんとうは

  地球の外は 漆黒の闇・・・

   いくつもの小さな穴から

      光りが漏れている

  ただ それだけなのに

    美しいはずはない・・・

      
 漏れた小さな光の明滅は

  果てしなく遠く あまりにも淋しい 

    始まりもなく 終わりもなく

    広大無辺の宇宙の片隅に

     人間 独りいる

    分かっているのは それだけだ・・・

    だからこそ・・・

  夜空を美しいという孤独な人間を

   ただ黙って

   この腕の中に 抱きしめたい・・・

        願わくば

       喜びとも苦しみとも定かならぬ声が

       なお一層 狂える炎と化し

     行方も定かならぬ流星となって

    二つの影が溶け合い

    やがて ひとつの

     愛になるまで・・・

  施錠
Date: 2005-01-13 (Thu)
    面会室で待っていると
  廊下の向こうに彼がいた
 出てきた部屋に施錠して
   看護婦は言った
    「ゆきおさん、いいお正月になったね。ごゆっくり」

    彼は看護婦に言った
  「あなたもこちらに来て 一緒にお菓子を食べませんか」
 ハッキリとした口調に看護婦は驚いた
     
   「いいのよ私はー」 40歳前後の物静かな人

    彼は笑っていた 彼女が扉の向こうに行くと
   「あの人は とても真面目な人なんだ」と彼が言った
  彼が人を誘うのは30年ぶりだった
    からかっている?そんな余裕はないはずなのに・・・

       彼は嬉しそうだった
       それだけは確かだった
    
    手を握った?・・・・いいや握ってない
   握ってみたい?・・・難しい質問には応えたくない
  彼は深刻な哲学者の顔になった
   ぼくは 彼をからかってしまった・・・
     「ごめん・・・ではこのチョコレートを食べようか?」
    銀紙を剥がしていると
    彼の目は銀紙の動きと一緒になった

    幸か不幸か 彼はまだ女性の柔肌を知らない
      チョコレートの味だけは
        知っている・・・

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